機材レビュー

Austrian Audio Hi-X60 密閉型モニターヘッドホンレビュー!音場・定位・快適性・リスニングまでいける…のか!?

Austrian Audioと言えば作曲家でYouTuberをやっている和田貴史さんが激推ししている開放型ヘッドホン Hi-X65。

その影響もあり、近年、DTMerやオーディオ界隈でもじわじわと存在感を高めていてずっと気になっていたAustrian Audio Hi-X60 密閉型モニターヘッドホンをレビューしていこうと思います。

どんな人におすすめか、音質や装着感などをレビューしていきますので機材選びの参考になればうれしいです!

Austrian Audioとは

Austrian Audio(オーストリアン・オーディオ)は2017年にオーストリア・ウィーンで設立された音響機器メーカーです。

オーディオ製品で有名なAKGの元エンジニアたちが中心となって立ち上げたブランドで、プロフェッショナル向けのマイクやヘッドホンを生み出しています。

生い立ちが気になったので少し深堀してみた

きっかけは長年にわたり世界中のスタジオで愛されてきたAKGのウィーン本社が閉鎖されたこととのこと。

これにより多くの熟練エンジニアたちが職を離れることになりました。しかし彼らはただ散り散りになるのではなく「本物の音を追求する場を自分たちで作ろう」と立ち上がる。

こうして集まったのが、元AKGのエンジニア22名。音響設計、機械工学、ソフトウェア開発など各分野のスペシャリストたちが再結集し、Austrian Audioを設立そうです。

設立が2017年とまだまだ歴史は浅いメーカーですが、Austrian Audioは単なるブランドではなく音を知り尽くした技術者たちの再挑戦なのは熱くないですか。

まさにアベンジャーズ。

ちなみにAKGのウィーン本社はSamsung(サムスン)に買収されたそうです。

外観・装着感・スペック

メタリックでスタイリッシュ!モダンでどのメーカーにもないようなデザインかっこよくないですか。

項目内容
ドライバー44mm Hi-X(High Excursion)ダイナミック型
構造密閉型(クローズドバック)
インピーダンス25Ω
音圧感度110dB SPL/V
再生周波数帯域5Hz〜28kHz
最大入力150mW
重量約320g(ケーブル除く)
ケーブル着脱式(1.2m)
プラグ形状標準プラグ+ミニプラグ変換アダプター付属

装着感

重量は約320g(ケーブル除く)と密閉型としては軽量な部類ですが、持った感じはずっしりとしていてハウジングやイヤーカップのメタルパーツからひんやり冷たいのが伝わってきます。

イヤーパッドの質感は低反発枕ですね。厚みがあって耳をすっぽり覆い隠すタイプです。側圧は割としっかりありますがこのイヤーパッドのおかげで快適です。

そして驚いたのが遮音性です。

低反発イヤーパッドがぴっったりと密着するおかげで、まるでノイキャンヘッドホンのよう。作業中のパソコンのファンの回転音が全く聞こえなくなりました!

これは意外だった新視点のおすすめポイントですね。

スペックから見える設計思想

表からもプロフェッショナルユースを前提とした密閉型モニターヘッドホンで現場で求められる精度・耐久性・快適性が凝縮されているのがわかりますね。

独自開発の44mm Hi-X(High Excursion)ドライバーは振動板の動作精度を高めることで低域のタイトさと高域の抜けの良さを両立し、キックやベースの輪郭を明瞭に捉えつつシンバルやボーカルの空気感も自然に再現しているとのこと。

インピーダンスは25Ωと低めなのでオーディオインターフェースはもちろん、スマホなどのポータブル機器でも十分な音量が確保可能だと思います。音圧感度は110dB SPL/Vと高めです。

再生周波数帯域は5Hz〜28kHzと広く、耳に聴こえる範囲を超えた帯域までカバー。これは、EQや空間処理の判断において問題なく使えるスペックですね。

ケーブルは着脱式です。標準プラグとミニプラグの変換アダプターも付属。

折り畳み可能で専用ケースにすっぽり

イヤーカップは回転、スイーベル(折り畳み)可能でかなりコンパクトに収納できます。持ち運びにも便利で専用ケースは頑丈でケーブルや小物の収納も可能です。

音質レビュー!

低域:タイトで膨らまず、キックの輪郭が明瞭

低域は非常にタイトで、余計な膨らみがありません。キックやベースのアタックが明瞭に聴き取れるためEQやコンプの調整がしやすく、ミックス時の判断精度が高いです。

量感は少なめで、沈み込むというより芯がある低音と言った印象ですが下まで出ていない訳ではないのでモニタリングは可能です。

中域:ボーカルの定位がしっかり、EQ判断がしやすい

中域は情報量が多く、ボーカルしっかり前に出てくるタイプです。定位もしっかりと感じられます。特にセンター定位の安定感が高く、パンニングやEQの微調整にも強い印象。

ボーカルの帯域が埋もれず、「どこを削るか」「どこを持ち上げるか」が直感的に判断できるのはモニター用途として使えると思った。

高域:抜けが良く、シンバルの粒立ちも自然

高域は抜けが良く、耳に刺さらない自然な伸びがあります。シンバルやハイハットの粒立ちが明瞭でリバーブの残響や空気感の調整にも向いていると感じます。

開放型ほどの空気の抜けは感じないですが、密閉型としては驚くほどクリアで爽快。

トータル

全体的にシャープで見通しが良く、情報量の多いモニターサウンドという印象。ボーカルが前に出てきて見やすい。

スッキリ目ではあるけどドンシャリではないです。かと言ってシャリホンで高域が刺さるかと言われたら全くそんなことも無い。

まとめ

どんな人におすすめか

Hi-X60最大の特徴は「遮音性」

そのことから、Austrian Audio Hi-X60は、レコーディングする人におすすめの一台だと思いました。

密閉型構造により外部の環境音をしっかりと遮断し、録音中でも音に集中できる静かな空間を確保してくれます。

自宅や共有スペースでの収録では、生活音や空調ノイズが気になる場面もありますが、Hi-X60なら周囲の音を気にせず録音に集中できるのが大きな利点です。

さらに、遮音性が高いことでマイクへの音漏れを防ぎ、ボーカルやアコースティック楽器の収録にも安心して使えるのがポイント。

スタジオ用途はもちろん、自宅録音でもプロ品質を目指す人にとって信頼できる選択肢です。

驚くべきは、これほどの遮音性を持ちながらも音場の広さや定位の正確さを犠牲にしていないこと。これはAustrian Audioの設計思想とHi-Xドライバーの精度によるものだと感じます。

「環境音に邪魔されず、正確な音を聴きながら録音したい」そんな悩みを抱えるDTMerやエンジニアにとって、Hi-X60は密閉型の理想形であり、録音現場の頼れる相棒になるでしょう。