この記事では、平面磁気駆動型の有線ヘッドホン「HIFIMAN ARYA」の音質を中心にレビューします。同メーカーの人気モデル「Edition XS」とも比較してみました。どちらも魅力的なヘッドホンでそれぞれに個性と強みがあります。実際に使って感じた違いや印象を率直にお伝えすることで購入を検討されている方の参考になれば嬉しいです。
製品概要

主な特徴
- 平面磁気駆動型ドライバー
独自の「ステルスマグネット」技術を採用し、音響的な透明性を向上。歪みを抑え、ピュアで自然な音を再現します。 - ナノメートル厚振動板
極薄の振動板により、レスポンスの速さと高い解像度を実現。音の立ち上がりが非常に滑らかです。 - オープンバック構造
開放型ならではの広い音場と自然な抜け感。スタジオモニター的な使い方にも適しています。 - 非対称イヤーカップ設計
人間の耳の形に合わせた形状で、快適な装着感と自然な音の流れを両立。 - リケーブル対応
3.5mm端子でケーブル交換が可能。付属ケーブルはCrystalline単結晶銅線材を使用し、6.35mm標準プラグを採用。
■ HIFIMAN ARYA スペック概要
・駆動方式:平面磁気型
・構造:オープン型(開放型)
・インピーダンス:35Ω
・感度:90dB
・再生周波数帯域:8Hz〜65kHz
・重量:約404g
・ケーブル端子:3.5mm(着脱式)、6.35mm標準プラグ
・振動板:ナノメートル厚振動板
・磁気構造:ステルスマグネット構造
・発売日:2019年3月22日
・価格帯:97,000円〜145,000円(市場価格)

この見た目、まさにHIFIMANです。
お家芸とも言えるデカハウジングは初めて見た人には驚かれるかもしれませんが使い慣れたユーザーにとってはむしろ実家のような安心感ありますね。
このイヤーカップは耳をすっぽり包み込み、音に包まれるような没入感を味わえるデザインです。
外観と付属品

パッケージは他機種共通でプリントされた段ボールに入っています。大きさも一緒ですね。

中身はこんな感じで付属品はケーブルのみです。プラグは6.3mmなのでスマホで使う場合は変換が必要です。
音質
HIFIMAN ARYA

最初に感じたのは圧倒的な解像度の高さ。ほんとにこれ、録音された音なのか?AD-DA変換されたものなのか?と疑いたくなるほど、生音を聴いているようなリアルさがあります。
もちろん「高級機=そんな音」ってわけではなく、価格帯が上がるほど個性も際立ってくる中でARYAは“録った音をそのまま届ける”という原音再生能力に特化している印象です。
どこにもピークがなく、音量を上げても耳に刺さらず、どこまでも自然。これがARYAの魅力だと感じました。
音質は寒色系寄りでボーカルや金物系の高音域にキレと鋭さを感じますが、誇張された感じや変な味付けは一切なし。むしろ、うまく引き算されたような洗練された音作りです。
音像はわずかに遠く感じますが、そのぶん空間の広がりがしっかりとあり、ステージの奥行きを感じられます。
低音域は自然で圧迫感やこもりもなく、スッと抜ける感じ。高音域の鋭さと相まって、アタック感のあるキレのいいサウンドが気持ちいいです。ベースの輪郭もくっきり見えるのでフレーズを追うのが楽しくなります。
HIFIMAN Edition XS(ARYAと比較して)

同じくデカハウジングで装着感や重さの違いはほとんどないです。
高音域はとにかく澄み切っていて、こちらもシンバルの余韻や空気感まで丁寧に再現されるほど解像度が高いです。リバーブの切れ際やスネアのゴーストノートまでしっかり見えるので、ミックスや音作りとの相性はかなり良さそう。
低音は量感こそ控えめですが、輪郭が非常に明瞭でキックやベースのアタックがしっかり感じられます。
音の傾向は全体的にフラットで、ARYAを“さらにおとなしい音”にしたという印象。
ARYAと違うのは、Edition XSの低音域には独特の艶があって、音量をその圧に合わせて調整すると相対的に中高音域が少し引っ込んで聴こえる印象です。ボーカルの存在感は比較すると控えめで、前にグッと出てくるタイプではありません。
再生機器によってはこの艶が唯一の魅力になるかもしれません。
まとめ
このヘッドホンを手にしたら、録音された音が「本当に録音なのか?」と疑いたくなるほどのリアルさを感じてほしいと思いました。
寒色系の音作りながら誇張や味付けは一切なく、どこまでも自然で洗練された音質は“引き算の美学”ですね。この感覚は制作でも活きてくるものがあります。
音像はやや遠めの印象ですがそのぶん空間の広がりと奥行きがしっかりと感じられ、ステージの立体感が目に浮かびます。
価格は高級帯の部類に入りますが、後悔することなくその価値を見出せると思います。
Edition XSとの比較では独特な艶があるものの音質の方向性は同じように感じましたが、ARYAのほうが解像度や原音再生能は優れている印象です。
特に細かなニュアンスの描写力に差があり、ARYAではリバーブの余韻や倍音の伸びがより自然かつ立体的に聴こえます。XSでも十分に高解像度ではあるものの、ARYAは一音一音の情報量がさらに濃いです。
総じてEdition XSはコストパフォーマンスに優れていますが、それを加味してもARYAはその上位互換としてより深く味わえるヘッドホンだと感じました。
注意点
駆動力に関してはどちらもアンプやDACの質によって音の表情が大きく変わる印象でした。
スマホでも音量は取れないこともないですが、やはりHIFIMANのヘッドホンはDACやアンプと組み合わせて据え置き環境で使用してもらいたいですね。
音も盛大に漏れるタイプですので、静かな室内でゆったりと聴くのがおすすめです。