機材レビュー

iLoud Micro Monitorレビュー:MTMのサブ機として導入した理由と実力

「ヘッドホンだけでは不安」「限られたスペースでもスピーカーで音を確認したい」
そんな悩みを抱えるDTM初心者や宅録中級者、動画クリエイターにとって、iLoud Micro Monitorは魅力的な選択肢です。

筆者はiLoud MTMをメインに使っており、サブ機としてMicro Monitorを導入。Audient ID24のLINE OUTから接続し、小型スピーカーでもミックスのバランスや定位を確認できる環境を整えました。

製品スペックと特徴

項目iLoud Micro MonitoriLoud MTM
サイズ(1本)約180×135×90mm約264×160×130mm
重量(1本)約850g約2.1kg
周波数特性55Hz〜20kHz40Hz〜24kHz
出力50W(25W×2)100W(70W LF + 30W HF)
接続端子RCA、3.5mmステレオミニ、BluetoothXLR、ARCマイク対応
主な特徴DSP制御、EQ補正、小型設計位相補正、ルーム補正、正確な定位

iLoud Micro Monitorは、iLoud MTMをメインに使っている筆者が「サブ機」として導入したスピーカーです。Audient ID24のLINE OUTから接続し、限られた作業スペースでもスピーカーでの音確認ができる環境を整えました。

導入のきっかけは、「小型スピーカーでもミックスのバランスや定位を確認したい」という素朴な欲求。ヘッドホンだけでは見落としがちな空間感や音像の広がりを、手軽にチェックできる手段として選びました。

設置性と使いやすさ

まず驚いたのは、そのサイズ感。ノートPCの横にすっと収まるほどコンパクトで、宅録環境でも圧迫感がありません。重量も片側約850gと軽く、持ち運びも容易。背面のEQスイッチで環境に合わせた補正ができるのも便利です。

Audient ID24との接続もスムーズで、LINE OUTからの出力でノイズもなく安定した動作。Bluetooth接続も可能ですが、筆者はモニター用途として有線接続を選びました。

MTMとの使い分け

メインで使っているiLoud MTMは、ARCマイクによるルーム補正や広い帯域再生が魅力。空間表現や低域の沈み込みに優れ、ミックスの最終チェックには欠かせません。

一方、Micro Monitorは「小型でも音像を確認したい」「ヘッドホンでは分かりづらい定位を補完したい」といった場面で活躍。サブ機として導入することで、異なる再生環境での音の違いを把握しやすくなり、ミックスの精度が上がりました。

筆者はiLoud MTMをメインモニターとして使用し、Micro Monitorをサブ機として導入。両者は同じiLoudシリーズながら、設計思想も音響特性も異なり、それぞれに明確な役割があります。

MTMの強み:空間と正確性を支える“本気のモニター”

  • ARCマイクによる補正を施し、部屋の影響を最小限に抑えたフラットな再生環境を構築。
  • 定位の正確さは抜群で、音像がピンポイントに浮かび上がる。パンニングや空間系エフェクトの確認に最適。
  • 低域の沈み込みは深く、キックやベースの質感までしっかり描写。40Hzまで再生可能な帯域の広さが活きる。
  • 解像度も高く、EQやコンプの微細な変化まで見える。ミックスの最終判断に信頼できる存在。

Micro Monitorの役割:現実的な再生環境で“見え方”を補完

  • 小型スピーカーでの再生を想定したミックス確認に最適。スマホやノートPCで聴くユーザーの環境に近い。
  • このサイズでしっかり低音が鳴るのは驚き。ベースやキックの存在感があり、音源の“伝わり方”をシミュレーションできる。
  • Bluetooth接続も可能で、動画編集やリファレンス音源の再生にも活用できる。
  • 解像度は“まあまあ”だが、音像の分離感は良好。定位やバランスの確認には十分。
  • 設置によるクセもあるが、それが逆に“現実的な再生環境”としての価値を持つ。DESKスイッチの高域ざらつきや机の共振など、実際のリスナーが遭遇する状況を再現できる。

併用することで得られる“多視点”

  • MTMで「理想的な音場」を確認し、Micro Monitorで「現実的な再生環境」をシミュレーション。
  • ミックスの最終チェックでは両方を切り替えながら、定位・バランス・帯域の見え方を比較。
  • 宅録環境でも、プロスタジオ的な“複数モニター視点”を再現できるのが最大のメリット。

音質とモニター性能:サイズを超えた実力と、使いこなしの工夫

iLoud Micro Monitorは、見た目のコンパクトさからは想像できないほどの音圧と解像度を持つスピーカーです。ただし、設置環境や設定次第で印象が大きく変わるため、使いこなしには少し工夫が必要です。

ポジティブポイント:小型でも“聴ける”解像度と低音

  • 解像度は“まあまあ”。細かいニュアンスまで見えるとは言えませんが、ボーカルの輪郭やシンセの定位、リバーブの広がりなど、ミックスのバランスを確認するには十分な情報量があります。
  • このサイズでしっかり低音が鳴るのは驚き。ベースやキックの存在感がしっかり感じられ、ヘッドホンでは見えづらい低域のバランスを補完できます。
  • 中高域の明瞭さも良好で、音像の分離感があり、パンニングやEQ処理の効果を掴むのに適しています。
  • Bluetooth接続が使えるのも便利。モニター用途では有線接続が基本ですが、動画視聴やスマホからの再生など、作業の合間にも活用できます。
  • 音量感は近接リスニングには十分。宅録環境で「鳴らしすぎない」ちょうど良さがあり、長時間の作業でも耳が疲れにくい印象です。

ネガティブポイント:設置と設定で印象が変わる

  • DESKスイッチの影響:オンにすると確かにクリアになりますが、高音域がざらつき、耳に刺さるような質感になることがあります。特にシンバルや女性ボーカルのピークが強調されすぎる印象で、長時間の作業には不向きかもしれません。
  • 低音の強さと机の共振:サイズに対して低域がしっかり出る分、設置面との共振が大きく、机が鳴ってしまうことも。防振マットやスタンドの工夫が必要です。
  • スタンド使用時の定位の甘さ:本体のスタンドを立てて上向きにすると、音が“下から聞こえてくる”ような感覚になり、定位がぼやけます。耳の高さに合わせた設置が重要で、角度調整ができるスタンドの導入を検討する価値があります。

DESKスイッチONとOFFの周波数特性比較

iLoud Micro Monitorの背面には「DESK」スイッチがあり、デスク設置時の音響補正を目的としたEQが組み込まれています。筆者はこのスイッチのオン/オフによる音の違いを、実際に録音・測定して比較しました。

録音にはAudient ID24を使用し、スピーカーからの再生音を同一条件でキャプチャ。その後、周波数特性を解析した結果、以下のような傾向が見られました。

左:DESKスイッチOFF
右:DESKスイッチON

グラフから読み取れる傾向

・DESKスイッチ【OFF】時の傾向

OFF時のグラフでは、全体的にフラットで滑らかなカーブを描いており、特に中高域のピークが抑えられています。1kHz〜4kHzの帯域はON時よりも約2〜3dB低く、音像の輪郭がやや曇る印象を受けます。

  • 聴感上の印象
  • 音が自然で耳当たりが柔らかい。
  • 高域の刺激が少なく、長時間の作業に向いている
  • 中域が沈み気味で、定位がぼやける場面もある
  • 低域はON時よりも抑えられており、机の共振も軽減される

OFF設定は、ナチュラルな音像を求めるミックス作業や、耳の疲労を避けたい長時間作業に適しています。ただし、音の輪郭が甘くなるため、細部の確認にはやや物足りなさを感じるかもしれません。

DESKスイッチ【ON】時の傾向

グラフを見ると、1kHz〜5kHzの中高域にかけて複数のピークが現れ、特に2.5kHz〜4kHz付近で+3dB以上の持ち上がりが確認できます。これは、ボーカルやスネア、シンバルなどの帯域が前に出る要因となり、音の輪郭が強調される印象につながります。

  • 聴感上の印象
  • 音が明るく、抜けが良くなる。
  • ボーカルやアタック音が前に出て、定位がシャープに感じられる。
  • ただし、高域のざらつきや耳への刺激感が強く、長時間の作業では疲れやすい。
  • 低域もやや持ち上がっており、机との共振が増幅される傾向がある。

このEQ補正は、リスニング用途や動画編集など「明瞭さ重視」の場面では有効ですが、ミックス作業では刺激が強すぎると感じることもあります。

この実測結果から分かるのは、DESKスイッチのEQ補正は単なる「音質改善」ではなく、用途に応じた音の見え方を切り替えるためのツールだということです。

  • 明瞭さ・抜け重視 → DESK【ON】
  • 自然さ・耳への優しさ重視 → DESK【OFF】

また、設置環境(机の材質・スタンドの角度)によっても共振や定位の印象が変わるため、測定+聴感+設置の三位一体で判断することが重要です。

まとめ:小型でも”使える”モニタースピーカー

iLoud Micro Monitorは、単なる「小型スピーカー」ではありません。限られたスペースでも、音の輪郭・定位・低域の存在感をしっかり捉えられる、宅録環境における“現実的なモニター解”です。

筆者はiLoud MTMをメインに使用しつつ、Micro Monitorをサブ機として導入。Audient ID24との接続やスタンド設置、DESKスイッチのEQ補正を含めた実測・実聴を通じて、サイズを超えた性能と、使いこなしの奥深さを実感しています。

  • このサイズでベースやキックが感じられる低域再生
  • Bluetooth対応で動画編集やリファレンス再生にも活用可能
  • DESKスイッチのON/OFFで音像の見え方を切り替えられる柔軟性
  • MTMとの併用で“理想と現実”の両視点からミックスを検証可能

もちろん、設置や設定によっては定位の甘さや高域の刺激感など、クセもあります。しかしそれこそが、実際のリスナー環境をシミュレーションする上での価値でもあります。

「ヘッドホンだけでは不安」「小型でも本気で音を見たい」
そんな宅録ユーザーや動画クリエイターにとって、iLoud Micro Monitorは“妥協しない第一歩”となるスピーカーです。