「1万円以下で“ハーマンカーブ”を実現した有線イヤホンがあるらしい」
そんな噂を聞きつけて手にしたのが、TRUTHEAR ZERO RED。
DTMや宅録、動画制作にも使える“高音質の最適解”として話題のこのモデルを早速購入して実体験ベースでレビューします。

製品概要:TRUTHEAR ZERO REDのスペックと特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 価格帯 | 約7,000〜9,000円 |
| ドライバー構成 | デュアルダイナミック(2DD) |
| インピーダンス | 10Ωアダプタ付属で音質調整可能 |
| 接続 | 0.78mm 2Pin、3.5mmケーブル |
| チューニング | Crinacle監修 |
TRUTHEAR ZERO REDは、1万円以下という価格帯ながら、音質・設計ともに妥協のない有線イヤホンです。Crinacle監修とは、音響測定とレビューで世界的に知られるオーディオ評論家「Crinacle」氏がチューニングに関与した製品を指します。
オーディオ評論家「Crinacle」氏とは
世界最大級のイヤホン測定データベース「In-Ear Fidelity」の運営者で数百以上のイヤホンを測定・レビューし、周波数特性グラフと客観評価を公開。オーディオ界では「測定の権威」として知られ、プロ・マニア問わず信頼される存在です。
ドライバー構成はデュアルダイナミック(2DD)で、低域から高域までスムーズな音のつながりが特徴。さらに、付属の10Ωアダプタを使うことで、音質の微調整も可能。これにより、好みに合わせたリスニングやモニター用途にも対応できます。
接続は0.78mm 2Pin仕様で、着脱式ケーブルを採用。3.5mmステレオミニプラグで一般的な機器に対応しつつ、リケーブルによるカスタマイズも楽しめます。
価格・構成・機能のバランスが非常に良く、DTMや宅録、動画制作などのクリエイティブ用途にも十分対応できるスペックです。
デザイン・ビルドクオリティ:写真映え+質感
TRUTHEAR ZERO REDの第一印象は、なんといってもその鮮烈な“赤”。真紅のフェイスプレートは光の角度によって表情を変え、写真映えも抜群。イヤホンとしての機能性だけでなく、所有欲を満たすデザイン性も兼ね備えています。

シェル部分は透明感のある樹脂素材で、内部構造がうっすらと見える造形美が魅力。2DDのドライバー配置も視認でき、技術的なこだわりが感じられる仕上がりです。
さらに、パッケージにはTRUTHEARのマスコットキャラ「SHIROI」が登場。アニメ調のイラストがあしらわれた箱は、開封体験にも遊び心を添えてくれます。付属品の配置や印刷の質も高く、価格以上の完成度を感じさせる内容です。
音質レビュー:1万円以下で“どハーマンカーブ”って本当?
ZERO REDを初めて聴いたとき、まず驚いたのはその「自然さ」と「聴き疲れしにくさ」。価格帯からは想像できないほど、各帯域のバランスが整っており、“どハーマンカーブ”という評判は伊達ではありません。
タイトルにもあるハーマンカーブとは?
ハーマンカーブ(Harman Target Curve)は、米Harman Internationalが数千人規模のブラインドテストを通じて導き出した「多くの人が心地よく感じる周波数特性」です。
- 低域:やや強調され、迫力と厚みを感じる
- 中域:フラットで自然、ボーカルが埋もれない
- 高域:耳に刺さらず、適度な抜け感
このカーブは、部屋でスピーカーを聴くときの音響体験を再現することを目的としており、現在では多くのイヤホン・ヘッドホン設計の基準となっています。
ZERO REDの周波数特性
ZERO REDは、低域用10mm+中高域用7.8mmの2DD構成により、帯域ごとの分離が非常に良好。10Ωアダプタを使うことで、低域の量感を微調整でき、ハーマンターゲットに近いチューニングが体感できます。
- 高音域:刺さりにくく、ナチュラル。10kHz付近が抑えられており、長時間のリスニングでも疲れにくい
- 中音域:ボーカルが厚みを持って前に出る。定位も安定しており、宅録や動画編集時の確認にも◎
- 低音域:タイトで見通しが良く、過剰なブーミーさはなし。サブベースまでしっかり鳴るが、ミッドベースは抑えめ
実用性とモニター用途
SONY MDR-EX800STと比較しても「ZERO REDの方が良いかも」と感じるほどの完成度。宅録やDTMでの簡易モニター用途にも十分対応できる音質で、定位・分離・音場の安定性が高く、編集作業にも安心して使えます。
ZERO REDは、“科学的に心地よい音”を1万円以下で体験できる稀有なモデル。ハーマンカーブに忠実なチューニングと、実用性の高い音質設計が、DTM・宅録ユーザーにも強くおすすめできる理由です。
リケーブルで4.4mmバランス接続してみた:音の変化と実用
リケーブル可能と言ったらリケーブル。TRUTHEAR ZERO REDは0.78mm 2Pin仕様の着脱式ケーブルを採用しており、4.4mmバランスケーブルへのリケーブルも可能です。筆者も実際に試してみたところ、音質に明確な変化がありました。
- 音量がわずかに上がり、駆動力の余裕を感じる
- 低域にハリが出て、輪郭がより明確に
- 全体的にダイナミクスが向上し、空間の広がりもわずかに増す印象
とはいえ、ZERO REDはインピーダンスが低く(約10Ω前後)鳴らしやすい設計のため、スマホや一般的な3.5mm出力でも十分な音量と音質が得られます。
そのため、「バランス接続じゃないと本領発揮できない」というタイプではなく、環境に応じて柔軟に使えるのが魅力。バランス接続にこだわらずとも、ZERO REDの持つ音質の良さはしっかり体感できます。
リケーブルによる音の変化は、あくまで“味付け”の範囲。本体のチューニングが優れているからこそ、どんな接続でも安定したパフォーマンスを発揮してくれるのがZERO REDの強みです。
イヤーピースによる音質変化:低域と明瞭度のバランス

RUTHEAR ZERO REDには、シリコンタイプ6種+フォームタイプ1種の計7種類のイヤーピースが付属しており、サイズや素材によって音の印象が大きく変化します。
特に顕著なのが低域の出方と明瞭度のバランス。
- 大きめのイヤーピースを使うと、耳との密閉性が高まり、低域がしっかりと出てきます。キックやベースの厚みが増し、リスニング用途では迫力あるサウンドに。
- 一方で、小さめのイヤーピースにすると、低域が抑えられ、代わりに中高域の明瞭度が向上。音の輪郭がくっきりし、定位や分離感が際立ちます。
筆者の環境では、一番小さいサイズのイヤーピースが最もバランス良く聴こえた印象。低域が過剰にならず、ボーカルや楽器の定位も安定し、宅録や動画編集時のモニター用途にも適していると感じました。
イヤーピースひとつでここまで音が変わるのは、ZERO REDのチューニングが繊細である証拠。自分の耳に合うサイズを見つけることで、音質のポテンシャルを最大限に引き出せるモデルです。
付属の10Ωのインピーダンスアダプタを使用することで音質に微妙な変化が生まれます。
筆者の環境では、アダプタを装着することで全体的に音が落ち着き、丸みを帯びた印象に変化しました。
- 高域の鋭さが少し抑えられ、耳当たりが柔らかくなる
- 中域はやや後退するものの、ボーカルが滑らかに
- 低域はタイトさが減り、ふくよかで包み込むような質感に
この変化は、リスニング用途や長時間の作業時に特に有効。耳への負担が軽減され、BGM的に流しながら作業する際にも心地よく聴き続けられます。
一方で、モニター用途ではアダプタなしの方が定位や分離感が明瞭に感じられるため、用途に応じて使い分けるのがおすすめです。
ZERO REDは、こうした“音の微調整”ができる柔軟性も魅力のひとつ。イヤーピースと合わせて、自分好みのチューニングを探す楽しさがあります。
他モデルとの比較:ZERO初代・HEXA・他社製品
| モデル名 | ドライバー構成 | 音質傾向 | 価格帯 | 用途・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ZERO 初代 | 2DD | 低域寄り、迫力重視 | 約6,000円 | リスニング向け。低音の量感が強め |
| ZERO RED | 2DD(Crinacle監修) | バランス型、明瞭 | 約8,000円 | DTM・宅録・動画制作にも対応。定位が安定 |
| HEXA | 1DD+3BA | 高解像度、分析的 | 約10,000円 | モニター用途に最適。中高域の分離が優秀 |
| Moondrop CHU | 1DD | 明瞭でシャープ | 約3,000円 | 入門向け。高域が強めでやや刺さることも |
| 7Hz Salnotes Zero | 1DD | フラット寄り | 約2,500円 | コスパ重視。中域が素直で聴きやすい |
まとめ:TRUTHEAR ZERO REDは価格以上の最適解
オーディオマニア界隈で話題になったTRUTHEAR ZERO REDは、1万円以下という価格帯ながら、ハーマンターゲットに忠実なチューニングと、宅録・DTM・動画制作にも対応できる音質バランスを備えた、非常に完成度の高い有線イヤホンです。
- ✅ Crinacle監修による“どハーマンカーブ”の音質
- ✅ 2DD構成による帯域分離と自然な定位
- ✅ イヤーピースや10Ωアダプタで音質調整が可能
- ✅ リケーブル対応で拡張性も高い
- ✅ デザイン・パッケージの完成度も高く、所有欲を満たす
筆者の環境では、一番小さいイヤーピース+アダプタなしが最もバランス良く、宅録や動画編集時のモニター用途にも安心して使えると感じました。
また、4.4mmバランス接続による音の変化も楽しめますが、鳴らしやすい設計なので3.5mmでも十分に本領を発揮してくれます。
「安くて音がいい」はよくある言葉ですが、ZERO REDはそれを“科学的に証明された音質”で実現している稀有なモデル。
イヤモニ入門にも、宅録のモニター補助にも、そして日常のリスニングにも赤い最適解として、強くおすすめできる一本です。
